だけど、悲しいかな。坊っちゃまは私に顔を近づけ「目を閉じろ」と言う。


「ご、ご冗談はおやめ下さい。坊っちゃま!」


焦る私を見て、坊っちゃまの不敵な笑みは消えなかった。ばかりか、クツクツ笑って強気な態度。


「冷たすぎるアイスはな、熱を与えればいいんだよ。こうやって、溶かすようにな」

「んぅ……っ!?」


抵抗もむなしく、坊っちゃまは私にキスをした。触れた唇は確かに熱くて、溶けそうなほど。


「ぷは!こ、これ以上は怒ります!」


だけど、いくらアイスが怒ろうが怒鳴ろうが。一度でも熱に触れれば、溶けるまでに時間はかからないようで……。


「いいから。黙って俺に食われてろ」

「っ!」


めったに見ない坊っちゃまの真剣な顔に釘付けになり、思わず見入ってしまう。そんな私を見て――坊っちゃまは、満足そうに口角を上げた。



「熱で溶けて食べ頃だな。

堪能させてもらうからな、冷愛」



【 end 】