振りぬかれたバット、キィィィンという甲高い金属音、青空に吸い込まれていく白球。
 二対一、九回裏、ツーアウト二、三塁での、サヨナラホームラン。
 何度も何度も、このシーンが頭の中で再生される。
 自販機の駆動音だけが響くホテルのロビーのソファーに座りながら、私、木ノ下光莉は興奮で叫びたいのをこらえて代わりにはぁぁー、と大きく息を吐いた。
 やっぱりかっこいいな、松川太陽先輩……!
 松川先輩は、我らが星南大附高校野球部主将。名前のとおり太陽みたいな人で、中学からの私の、あこがれの先輩。
 私はこの先輩がいるから、この高校に進学して、マネージャーとして入部したんだ。
 今日の昼間に行われた、甲子園初戦。
 先輩のサヨナラホームランで、見事二回戦進出を決めたの!
 もう就寝時間はとっくに過ぎているんだけど、昼間の興奮がまだ冷めずに、なかなか寝付けなくて。
 こんな調子じゃ同室の先輩に迷惑かなと思って、飲み物買ってきます、と言って部屋を抜けてきちゃったんだ。
 そろそろ部屋に戻らないと、とは思うんだけど――