冒頭の別れようとはっきり言えたのは高校に入り、僕に好きな人が出来たからだった。


別れようと言った後も「いつものように抱いてよ」と言いながら服を脱ぎ出す。


「咲優……」

咲優のベッドの布団を上半身にかける。

「理久斗は優しいじゃん、私の言う事を何でも聞いてくれるでしょ?ねぇ……抱いてよ」


「咲優も気づいてるよね、今の状態に……身体だけになってるって事」

「だって彼氏だよ、Hしてもいいじゃん」

「付き合うってそれだけじゃないよね?」

咲優は抱きついてきた。


「理久斗のぎゅーは落ち着くの、昔から」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど………別れたいのは実は好きな人が出来た」

咲優の腕が僕からはずれた。


「好きな人……」

「うん」


「もう付き合ってるの?」

「いや、今は咲優が彼女だから、ちゃんと別れてから僕なりに頑張るつもりだよ」


「……そう……理久斗らしいね」


「そうかな……でも一目惚れだったんだ、だから……別れて欲しい」


理久斗は頭を下げた。


少しの間、話さない時間があったが、咲優が服を着てくれた。


「わかった、でも理久斗の事は好きだよ」


「僕も好きだったよ、ただ…咲優より好きな人が出来てしまった、ごめんな」


咲優が理解してくれたから前にすれ違った男の事は話すのをやめた。



なるべく穏便に別れたかったから……


「風邪をひくからちゃんと服を着て、咲優」

ボタンを止めないで袖だけ通していた咲優に僕はボタンを止めてあげる。


「ふふっ、やっぱり優しいね、理久斗は……今までありがとう、わがままばっかり聞いてくれて」

「こちらこそありがとうな、咲優」



咲優の頬から伝っていた涙を親指で拭った。


「それじゃあ、帰るな、ちゃんと学校行くんだぞ」

「わかってるし(笑)」


咲優に手を振り僕は部屋から出た。

ドアを閉めるとすすり泣く声が聞こえた。



ごめんな、咲優……