夏の日の思い出

 騒ぎを聞きつけたのか、警備員さんが二人小走りで近づいてくる。

 ちらっと横目で確認した男たちが、「ちっ」と小さく舌打ちすると、警備員さんとは逆方向へと足早に去っていった。


「君たち、大丈夫だった?」

「はい。助かりました。ありがとうございます」


 深々と頭を下げるわたしの横で、男たちの背中を睨みつけたまま、ぎゅっと両方の拳を握りしめる橙哉。


「最近、タチの悪いナンパが多いらしくてねえ。被害報告が絶えないんだよ」

「……もう、絶対に離れたりしないんで。すんませんでした」


 そう言って、橙哉が警備員さんたちに向かってぺこっと小さく頭を下げる。


「それじゃあ、気をつけて。残り時間、めいっぱい楽しんで」