夏の日の思い出

「やめてって言ってるじゃないですか。警察に通報しますよ?」


 キッと男たちを睨みあげると、手に持っていたスマホを素早く操作する。


「は? 調子に乗ってんじゃねえよ。おまえみたいなブス、本気で相手にするわけねえだろ」


 男がつかんでいたわたしの腕を離すと、わたしの肩をドンッと押した。

 あ、やばっ。倒れる……。

 きゅっと目を閉じ、衝撃に備えていたら、誰かが間一髪わたしの体をうしろでキャッチして支えてくれた。


「ありがとうございま……と、橙哉!?」

「……桃香はブスじゃねえし。おい、ちゃんと訂正しろよ」


 橙哉が、聞いたこともないような低い声を出す。


「は? なんだこいつ」

「今頃現れて、正義の味方気取りかよ。だっせ」


 茶髪男が、ふふんっと鼻で笑う。


「訂正しろっつってんだよ。おまえら、態度だけじゃなくて、耳も悪いのかよ」

「はあ!? なんだと、てめえ」

「ちょっと、橙哉。やめなってば。わたしは別に、そんなの気にしてないから」


 橙哉のTシャツの裾を引っ張って止めようとしても、男たちを睨みつけたまま、一向に引こうとしない。


「——ちょっと、君たち。揉め事かな?」