夏の日の思い出

 母親同士が仲が良くて、生まれたときからずーっと一緒に育ってきた、うちのお向かいに住む幼馴染の橙哉。

 橙哉のことを異性として見たことなんか、一度もなかった。

 ……けど。


「俺、桃香のことがずっと好きだったんだ」


 急に告白されたのが、夏休みのはじまる一週間前。


「ごめん。橙哉のこと、そういうふうに見たことないから」

 って、ちゃんと本音を伝えた。


 でも、そうしたら橙哉、なんて言ったと思う?

「だったら、お試しでいいからさ。カレカノごっこ……付き合ってよ」

 なんて言うんだよ?


「なに言ってんの。バッカじゃないの」

「ふぅん。俺のこと、そういうふうに見ちゃうかもって思って怖いんだ」

「橙哉のことを男として見るなんて、ぜーったいありえない!」

「だったら賭けようぜ」

「じゃあわたしが勝ったら、喫茶ササキの予約限定プリンパフェ、橙哉のおごりだからね」


 なんてどんどんおかしな方向に流れていって。

 なぜか高1の夏休みの一ヶ月半、カレカノごっこをすることになってしまったんだ。


 しかも、「夏休み初日、遊園地デートするぞ」なんて言うんだよ!?

 断ったらまた「ふぅん、そんなに俺にホレるのが怖いんだ」なんて言われるのがわかってたから、渋々デートに付き合うことになって。

 で、現在地がここ。