「バカだな、ほんとに」

「だって……」


 わたしは、涙目で口をへの字に曲げて、橙哉(とうや)を見あげた。


「ダメならダメって、なんで乗る前に言わねえんだよ」

「し、知らなかったんだもんっ」


 だって、はじめて乗ったんだもん。

 ……ジェットコースター。

 橙哉がジェットコースターが好きだって言って、遊園地に来るのをすごく楽しみにしてたから。

 言えないじゃん。乗ったことないなんて。

 わたしが乗ったことないって言ったら、橙哉はきっと「じゃあ、他のやつにしようぜ」って言うんでしょ?

 そんなの……橙哉に我慢させちゃったら、わたしだって楽しくないんだもん。

 この『お試し初デート』を、せっかくだから楽しいものにしたいって思ってるのは、橙哉だけじゃないんだよ?