復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

 爆発が起きればどれだけの犠牲者がでたか。

 ディートリヒにとって人の命に重さはないのだろう。

「あいつは心底腐ってるな」

 風呂からあがりながら、さっき聞いたばかりのピエールの話を聞かせた。

「焦っているんだろ。俺の評判をなんとしても落としたいんだ」

 ひと通り帝都の話をしたところで、グラスに水を注いだマロが言った。

「閣下、こんなことを申し上げてはなんですが……」

「なんだ。遠慮なく言うといい」

 受け取ったグラスの水を、アレクサンドは勢いよく飲む。

「ルルは、その……。閣下とはどういう?」

 ブッと吹き出しそうになる。

「すみません。恋人同士にしか見えなかったもので」

 マロは焦ったように続ける。

「閣下があんなふうに女性に優しく接するのはルルだけですよね?」

 言われてみればそうだ。

 アレクサンドにとって女性は面倒な存在だった。