復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

 城の裏門でルルと別たれアラレクサンドは、名残惜しさを胸に部屋に戻った。



 ルルが花の刺繍を仕上げてきたのは、次の日の夜だった。

「もう少し凝った方がいいですか?」

 微妙に色が違う淡い紫が薔薇の花びらを立体的に浮かび上がらせる。

「いや、これで十分だ。綺麗だな。うん、すごくよくできている」

 刺繍を優先してもらうために侍女の仕事を休んでいいとは言ったが、無理をさせてしまったらしい。

 しょぼしょぼした目を見る限り、徹夜をしたのかもしれない。

「急がせて、すまなかったな」

「いいえ。閣下は紫色がお好きなんですね」

 ルルがクスッと笑う。

 祭りの日、居酒屋で聞いた話を覚えているのだろう。

「まあな。実はあの噂は本当だ」

 その瞳の主は君かもしれないと心で続けるが、なにも知らないルルは「まぁ」とクスクス笑う。

 アレクサンドのハンカチは来週でいいと告げ、とにかくゆっくり休むようルルを下がらせた。

 ひとりになると、刺繍をしげしげと見た。

(まさにこれだ)