復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

「何度も言いますが、私は閣下の下だからこそこうして働いているんです。領主にもなりたくありませんし、閣下がいなければ帝都で事業でもしますよ」

 ピエールは侯爵家の三男であり、個人の爵位は男爵という自由の身である。

 アレクサンドの誘いがなければ、ここには来なかったと言ってはばからない。

「わかったわかった。で、この書類の山から片付ければいいんだな」

 はいと答えたピエールは、一番上の書類を満面の笑みで差し出す。

「取り急ぎお願いしたいのが、こちらです。皇室が直接魔石の取引をしたいとやかましく」

 皇室と聞いてアレクサンドは顔をしかめた。

「閣下が不在のうちに脅しをかけてきましたよ」

 手紙には、大公が無理なら代理人が急ぎ宮殿に来いと書いてある。

「勝手はできないと、かわしてきましたが。わざわざ閣下がいないときを狙うんですからね」

「あい変わらず、どこまでも姑息だな」

 二歳違いの弟ディートリヒの、にやついた顔を思い浮かべ、アレクサンドの眉間のシワは深くなる。