復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

 コトッと小さな音を立て差し出された皿の上のフルーツ。ふと目に留まったルルの手が、白魚のように綺麗であると気づいた。

 手の平にタコがないゆえ剣士ではない。魔法使いのような強いマナも感じなければ、暗殺者のように感情をコントロールしている様子もない。

 正確な年齢はわからないが、恐らく十代後半だろう。

 緑色の髪も瞳も珍しくはあるが、出身を特定できるほどではない。

 だとすると――。

 考えに耽りながらマンゴーを口に運び、ふと視線に気づき顔を上げると、慌てたようにルルは目を泳がせて頬を染めた。

 我が身を振り返り、ふと気づく。

 ガウンを無造作に羽織っただけで、ほぼ裸同然である。どうやら彼女はアレクサンドの、むき出しの胸もとを見ていたらしい。

(男の体を見慣れていないのか)

 恥ずかしそうに耳まで赤くする様子に、思わず口もとがゆるむ。

 なんとなく好感がもてる。

 昨日来た侍女候補は、こっちが恥ずかしくなるほど体をガン見してきたのにはまいった。