宮殿からあがる花火の音に、ルルは顔を上げた。

 今日は建国の日。

 宮廷の舞踏会で、いよいよディートリヒと対面する。

 心配なのはアレクサンドだ。

 ディートリヒにとって彼は、なによりも目障りな存在のはず。あの男の好きな毒殺を企んでいるのではないか。

 だがルルが不安を訴えると、アレクサンドは笑った。

『毒では俺は殺せない』

 生き延びるために毒に耐性をつけてきたというのだ。

 彼はそれよりも『お前が心配だ』とルルの頬を撫でた。

『宮殿に行っても大丈夫なのか? 少しでも具合が悪くなれば言うんだぞ?』

 どこまでも優しい人だと、ルルの胸は熱くなる。

「奥様、本当にお美しいです」

「ありがとう」

 鏡の中の自分が、照れたように微笑む。

 今日のドレスは薄紫。金糸と銀糸で薔薇の刺繍が施されている。

 最高級品のレースには宝石でできたビーズが編み込まれていて、光があたるとキラキラと輝く。