復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

 帝都であればごく普通で通る侍女でいい。強いていうなら、もの静かで空気のような存在感の薄い者と希望したが、どうもうまくいかない。

 動作が荒く大きな音を立てたり。甲高い声で逐一質問してきたり。あるいは媚びるような熱い視線が気になる等々。

 ひとり静かな侍女がいたが、幽霊のようにギョッとするほど暗くて、堪らず下がらせた。

 それに比べて、今のところルルに不満は感じない。

 若くとも物静かである。

「なにかあればすぐに交代させるぞ」

 結局、ルルで様子をみることにした。

「はい。よく働くよう申しつけておきます」



 ルルが炭酸水を持って戻ってきた。

 テーブルに置くと、フルーツのカットを再開する。

「ルル」

 突然名前を呼ばれて驚いたのか、ルルはビクッと肩を震わせた。

「はい」

「相変わらず、なにも思い出せないのか?」

 賽の目に切り込みを入れたマンゴーを皿に乗せた彼女は、戸惑うように「はい……」と頷く。

「すみません……」

 苦情のように感じたのか。