まだ父とは言えないのは寂しいが、堂々と会えるようになった。

 烏城から出て、密かに公爵邸に帰ったゴーティエ公爵は、打ち合わせ通り宮殿に行った。皇帝ディートリヒの提案を受けたのである。

 領地も財産も返される代わりに、宮殿にいるルイーズを本物であると認めるという取引だ。

 一週間後、宮殿で建国を祝う舞踏会が開かれる。

 そのときに、あらためてルイーズ及びゴーティエ公爵の潔白を公表し、ルイーズを皇后に迎えると宣言するという。

 それが昨日。これをもってゴーティエ公爵は軟禁状態から脱却した。

 今、帝国は大きな局面を迎えている。

 鍵を握るのはディートリヒではなく、アレクサンドだ。

「舞踏会のドレスは間に合いそうか?」

「はい、なんとか。ほかにもドレスをたくさん注文してしまいました」

 建国記念日の舞踏会でルルはいよいよ大公夫人として御披露目される。

 アレクサンドの復讐が終わるまで、大公夫人として社交活動もしなければならない。

 貴族ははっきりと外見を重んじる。