復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

 静かに音を立てず皿を置くところも、ふとした仕草も、緊張している割には落ち着いている。

 カップをテーブルに置くと、ルルはフィンガーボールで手を洗い、次にマンゴーやリンゴを切り始める。

 アレクサンドはようやくカンタンの思惑に気づいた。

 彼女を彼の専属侍女にするつもりなのだ。

「中断して、冷えた炭酸水を持ってきてくれ」

「はい。わかりました」

 ルルが出て行くと、アレクサンドは開口一番「だめだ」と言い放った。

 憮然としたまま溜め息をつき、カンタンを睨む。

 彼の身の回りの世話をしていた専属侍女が辞めた。

 高齢だったのもある。風邪をこじらせて寝込んでしまい、それをきっかけに体力に自信を無くしてしまったらしい。

 全幅の信頼を寄せていた彼女の引退はアレクサンドにはかなりの痛手ではあったが無理は言わず、『長生きしてくれないと困る』と、引退を了承した。

 戦争を終えて帰ってきたのを機に、カンタンは次の担当を決めようとしたが、これがなかなか決まらない。