ひとたらしどうし

その、瞬間の、こと。


ふわりと、まわりの空気が揺れた。


「大丈夫?」


こめかみを伝って、ダイレクトに脳に響いた声と、甘いミントの香り。


後ろから、私の腕を片手で支えて、片手は倒れかかった椅子を支えている。


無意識に見上げたら、私を見下ろすやわらかな目の中のやさしさが、私を見つめている。


……ーーッ……?!……


今度は、悲鳴にならない自分の声が頭の中で響いた。


力強さと優しさは、同時に存在するのだ。


そんなことに、はじめて気がついた気がする。