ひとたらしどうし

「…ッ!ちょっと…ッ!やめてよー」


実奈ちゃんの手から逃れるべく、体を左右に思い切り動かした、ら…


結構な強さで、後ろを歩いていたひとにぶつかってしまった。


「…わッ…!すみませんッ!!」


立ち上がって、謝りながら振り返った。


「…おー、相変わらず仲よしですねー」


元気があって、見ていて微笑ましいですよ。


にこっと笑う、ソース顔…


「…きゃ…ッ…?!」


あまりの突然の想い人の登場に、すっとんきょうな悲鳴が漏れた。


座っていた椅子の脚に、踵が絡まってしまって、あ…転ぶな…、んでもって、椅子も倒れるな。


12時30分の食堂は、まだまだ人がたくさんで。


こんな大勢の前で、転ぶし大きな音をたてるなんて…


むっちゃ、恥ずかしい…!!


すべての景色が、目の端にスローモーションで映る間際で、冷静にそんな風に考える。


…恥ずかしすぎる…、