ひとたらしどうし

「…叶夢!!」


私の知らない声が、ふいに叶夢さんの名前を呼んだ。


エコバッグを持つ、叶夢さんの左手を強く引いた、私の知らない女のひと。


反射で振り返った叶夢さんは、驚いたような呆然としたような表情を浮かべている。


強く引かれた、叶夢さんの左手は、その衝撃に耐えきれずにエコバッグを離してしまった。

床に散らばったのは、叶夢さんと私、ふたりで選んだ食材で。


でも、わかっている。


叶夢さんが振り向いたのは、大きな声で呼ばれたからでは、ない。


その声音と香水を、知っているから、だ…