ひとたらしどうし

「朝野さんッ!!」


呼ばれる声で、腕を掴まれる前にはもう、分かっている。


そのあまい声と、ミントが香ったから。


「…どうしたの…?大丈夫…?!」


どこから出てきた…?


しかも、とても心配そうな気持ちが乗っている声、で。


その表情、は、こんなときまで、もれなく、ズルい。


「…しらいし…さん…、」


彼の名前をただ、つぶやくのが精一杯の、私に。


「どうしたの?真っ青な顔をして。なにがあった?」


この暗がりの中でも、顔色が分かってしまうくらいの距離感なのだと、あらためて気がつかされて、感情が追い付いていかない。


恥ずかしいのか、嬉しいのか。


そんな感情は紙一重なのだと、こんなときに気がついた。