ひとたらしどうし

その瞬間の、こと。


私のほうへ視線を向けた、白石さん。


同時に、私が握った右手にぎゅっと力が入った。


少し、あがったまぶた。


引き上げられて、弧を描く、くちびる。


そのくちびるが、ゆっくり動くのを、確かに見つめている。


音は、ない。


ただ、そのくちびるを、読む。



「…み、せ、つ、け、て、や、ろ、う、か、?」


最後のクエスチョンマークまで、忠実に再現できる。


その意図は、明確には判断できないけれど、でも。


「…は、い…」


無声音の私の返事。


それをじっと見つめる、白石さんの私のくちびるへの視線が、熱を帯びている。


触れられているわけではいないのに、ひりひりと熱を持ってゆく、くちびる。