聖母のマリ子

「興味深いのは、公国が王女様のことをわざわざ王国に知らせてきたことです」

「ん?そこに意味なんてある?」

「公国側はマリコ様が桃の属性を保有している予言の聖母であることを知り得ないにも関わらず、そこになんらかの因果関係を認めたからこそ、リスクを承知で知らせてきたんですよ?意味がないわけありません」

「因果関係‥‥」

「王女様の年齢から察するに、公国の妃殿下が身籠ったのは、マリコ様の結婚式後で間違いない。説明しようのないことが、異世界からの転生者という説明しようのない人物と接点があった時に起こったとしたら、それを結びつけて考えようとするのは極々自然なことです」

「でも、私とナタリー様は晩餐会でお話した以外に接点はなかったよ?」

「そこなんですよ!」

 ジャンさんが興奮気味に身を乗り出し、その勢いに思わずのけぞってしまった。

「直接的な接点がないのに妃殿下に影響があったとしたら、その要因として考えられるのなんてマリコ様から放出された魔力以外あり得なくないですか!?」

「そ、そうかな?」

「そうですよ!もしマリコ様から放出された魔力を浴びることで桃の属性の出現が起こり得るなら、今回のことに説明がつきますよね!?もしかしたらまだ確認されていないだけで、他でも桃の属性が自然発生してる可能性があるかもしれない‥‥何か裏付けになる資料‥‥そうだ!」

 ジャンさんは突然立ち上がり、山積みになっている資料の束をひっくり返し始めた。

「あった!これだ!これ、見て下さい!過去に行われた人口調査で桃の属性に関する数字を抜き取った資料なんですけど、わかりますか?一番古い数字は分布が王都に限られています。まあ数字が古過ぎるのでこれがどこまで正確かはわかりませんし、単純に地方では鑑定が正しく行われていなかった可能性もありますが‥‥でも桃の属性が消滅する前の新しい数字なら調査の精度がかなり上がってるはずなので信頼できます。これによると、年を追うごとに数が減ってその分布は王都を中心にして円を描くように小さくなっていく‥‥」

「‥‥どういうこと?」

「公国の王女様から魔力の放出が認められていることから、桃の属性を持つ者はみな魔力を放出する特性があると考えられます。ただし神から遣わされた聖女ミアの力は偉大で、自然発生した者の能力がそれに劣ることは想像に硬くない。聖女ミアの魔力を直接浴びた者程その力が強く受け継がれるんだとすれば、この減少の仕方に説明がつくということです」

「あー‥‥つまり?」

 駄目だ。ややこしくて、よくわからない。