聖母のマリ子

 我慢しきれなくなった思いの丈をいつものお茶会で王太子に直接ぶつけることにし、私はそれを実行に移した。

「最初にお会いした後、この結婚をお断りさせて頂きたくて私から大司教様にお願いしたのですが、それを却下されたのはご存知ですか?」

 相変わらず目線は外されたままだが、明らかに王太子の動きが止まった。

「殿下との結婚は避けられないと説得され我慢していましたが、やはりここまで殿下に嫌われている状態では聖母としての責務を果たすのは非常に困難だと思うんです」

 いつもと同じなので感情までは読めないが、王太子が私を睨み付けてきた。

「殿下は何もお話下さらないので真意ははかりかねますが、私と結婚したくないんですよね?でもこのままだと結婚することになってしまうと思うんですが、それでいいんですか?ていうか、私は嫌なんですけど‥‥」

 この人、もしかして喋れないのか?

「私、子供を産むためにこの世界に来てるらしいので、この国の未来のためにできる限りのことをしたいと思ってるんです。正直、子供を産むだけなら殿下の子種を何か器具でも使って流し込めば妊娠はできるかもしれないって思わなくもないんですが‥‥」

 とんでもないことを言った自覚はあるが、王太子がぎょっとした表情をした。初めて表情を崩せたせいか、少しばかり気分が上がる。

「でも、子供を産むなら心からその子を愛してあげたいし、私はそんな状態で子作りをしたくないんです。相手は私とちゃんと向き合ってくれる人がいい。殿下では私の願いは叶わないですよね?だからお互いのために、この結婚を回避する方法を考えてみてはくれませんか?」

「君は‥‥」

 あ、喋った‥‥ていうか、震えてる?

「聖母という立場を盾にして脅すようなことをするなんて‥‥君はそんなことまでして王妃になりたいのか!?そんな方法で私から愛されると思ってるのなら大間違いだ!」

 あーなんか知らんけど、凄い怒ってるわ。この震えは武者震いってやつだな。

「あのー私の話、聞いてました?私はあなたとの結婚を回避して、他の人と結婚したいと言ってるんです。どうしても私が王籍に入る必要があると言われたんですが、結婚以外の方法がないか検討して欲しいとお願いしています。脅すつもりなんて一切ないし、王妃にだってなりたくない。あなたに愛されたいとも思ってませんよ?」

 駄目だ。全然話が通じてない。殺すぞみたいな顔して睨まれちゃってるよー。なんでだー。