「な、なんでしょうか」
「どうして泣いたの?僕が何かした……?」
「違いますっ!マスクウェル殿下は何も悪くありませんわ!」
そう言ってファビオラがマスクウェルを見上げるようにして見ると彼は苦しそうに眉を顰めている。
「理由を教えてくれ」
「……っ」
あと少ししかマスクウェルの婚約者でいられる機会がなく、婚約破棄されてしまうことが嫌だから、なんて言えずにファビオラは押し黙っていた。
「マスクウェル殿下のせいではないんです……わたくしのせいで」
「どうして僕じゃダメなの?」
「……え?」
「僕を選んでくれ。ファビオラ」
マスクウェルの悲しそうな表示にファビオラは戸惑っていた。
まるでマスクウェルがファビオラを好いているように聞こえなかっただろうか。
「こんなに君のことが好きなのに……っ、どうして伝わらないんだ」
その言葉にファビオラは思考停止した。
頭の中には『君のことが好きなのに』というマスクウェルの台詞がエコーのように反響していた。
何よりマスクウェルの気持ちを初めて聞いて、尚且つ両思いであることに戸惑いを隠せない。
(あれ、えっ……?こんな展開は原作にないはずよね????)



