トレイヴォンはマスクウェルの行動に驚き、目を見開いている。
しかしマスクウェルはファビオラの腕と腰を掴むと、引き寄せるようにして抱え上げた。
「───マッ、マスクウェル殿下!?」
「ファビオラ、少し休もう」
「~~~っ」
そしてトレイヴォンに背を向けて歩いていく。
いつも冷静なマスクウェルがファビオラを大切そうに抱えて、扉まで歩いていく。
「……!」
「トレイヴォンさまぁ、わたくし具合悪くなってしまってぇ」
「わたくしも頭がいたぁい」
「ちょっと、どきなさいよ!」
「あんたこそ邪魔なのよッ」
しかしトレイヴォンには大量の令嬢達に囲まれて、先に進めなくなってしまう。
その隙に、マスクウェルはファビオラと共に静かな廊下を進んでいく。
ファビオラは落ちないようにマスクウェルの首に手を伸ばそうか、伸ばさないか迷いながら腕を忙しなく動かしていた。
驚き過ぎたためか、ファビオラの涙もすっかり引っ込んでしまう。
(な、何が起こっているの……?)
マスクウェルに戸惑いすぎて不細工になった顔を見られなくてよかったと思ったのも束の間、どんどんと辺りが静まり返っていく。
そして会場より少し離れた場所にある医務室に入り、ファビオラは丁寧にベッドの上へと降ろされる。



