ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

ファビオラにドレスが似合っているかどうかを聞かれて、以前ならば恥ずかしくて誤魔化すように冷たいことをいっていた。


「とても……とてもよく似合ってる」


久しぶりに会ったからか素直な言葉がこぼれ出た。
ファビオラは手を合わせて喜んでいる。
マスクウェルのために頑張ってくれたのだとわかった瞬間に彼女を抱きしめたくてたまらなくなる。

その後もファビオラを独占したい、誰にも見せたくないと思っていた。
会場に着いてからもファビオラに見惚れる令息達を笑顔の裏で睨みつけていた。

ファビオラとダンスをしている時はまさに夢心地だった。
この幸せがずっと続けばいい、そう思っていたのにファビオラの頬からは涙が溢れ落ちる。

そのままファビオラが泣き出してしまう。
一体、何がそうさせるのかはわからない。

(ファビオラの笑顔を守りたいのに……!)

『ビオラ』という愛称を呼びながらこちらに駆け寄ってきたのはトレイヴォンだった。
ファビオラの涙が見えないように隠したのだろう。

ファビオラが他の男に連れて行かれてしまう。
そう思った瞬間、何かがプツリと音を立てて切れたような気がした。

マスクウェルはトレイヴォンの腕を引き留めるようにして掴んだ。


「待て」

「……!」

「ファビオラは僕が連れて行く」




(マスクウェルside end)