「君にファビオラは渡すつもりはない。僕は諦めるつもりはないから、君に可能性はないよ?」
そう言って牽制したものの、ファビオラに気付いてもらうにはどうすればいいかわからない。
(どうしたらファビオラに僕の気持ちをわかってもらえる?なにが彼女をそうさせるんだ?)
いくらファビオラの心内はわからない。
焦りだけがマスクウェルを蝕んでいく。
ドレスを贈ったのもファビオラに愛されていると、気にかけていると思って欲しい、そう願って送った。
ドレスのサイズはファビオラの侍女、エマが教えてくれた。
彼女はファビオラと婚約者になった時から二人の関係をサポートをしてくれていた。
マスクウェルが今までファビオラを諦めずにいたのは彼女の言葉があったからだ。
『ファビオラ様を幸せにできるのはマスクウェル殿下だけです』
『どうかファビオラ様を諦めないでください』
マスクウェルはその言葉を信じてこの婚約関係を続けていた。
しかし、ファビオラのドレスに合わせる髪飾りを買い忘れたことに気づいて街に出ると、そこにはファビオラとトレイヴォンの姿があった。
仲良さげに会話して触れ合う二人を見て、何かが音を立てて崩れ去る。
(……何故)



