ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

ふと、ファビオラの頭の中にあることが過ぎる。

(マスクウェル殿下とこうして過ごせるのも、あと少しだけなのね……学園に行けばアリス様と結ばれるのよね)

そう思うと胸が締めつけられるように悲しくなった。
わかっていたはずの結末なのに、受け入れていたはずなのに、嫌だと思ってしまう自分がいた。
しかしファビオラはその考えを振り払うようにすぐに首を横に振った。

(わたくしは愛に生きる女……ファビオラ・ブラックよ!悪役令嬢として、マスクウェル殿下の幸せを願って、去り際まで美しくいなきゃ)

気合いを入れながらファビオラは笑顔を作る。
しかしファビオラを襲う不安は暫く払拭できなかった。
マスクウェルとダンスを踊りながらも、この手を離したくないと思ってしまう。
幸せと不安が隣り合わせの中、曲が終わる。

(いつか……別れる運命ならば、こんなに好きにならなければよかった)

久しぶりに感情が昂ったからかファビオラは泣きそうになるのを堪えていた。


「ファビオラ……?」


ファビオラの瞳から一筋の涙が溢れていったのを見てマスクウェルが大きく目を見開いている。
ファビオラは急いで涙を拭って表情を取り繕う。
自分で決めたことなのに、こんな風に名前を呼ばれて触れていると勘違いしてしまいそうになる。