ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

「くだらなくないわっ!だって、こんな展開あんまりだと思わない!?」

「思いません。髪を結えるのでじっとしていてください」

「エマは超可愛いくせに超冷たいんだから」

「…………。意味がわからないので黙ってください」

「はぁ~~~」


大きな溜息を吐いたファビオラは、鏡に映った自分の姿を見た。
この国には珍しい黒髪に白のメッシュが所々に入っている。
瞳は林檎のような赤。まるで童話の中から出てくる魔女のような毒々しい色合いの女の子だ。
家名が〝ブラック〟に関係しているためか、ファビオラや家族は黒い瞳か黒い髪を持っている。

ここでマスクウェルとの準備の途中だが気分を切り替えて、ロマンス小説の舞台の説明をしよう。

まず、この小説のヒロインのアリス・レッド。
アリスはレッド公爵家の令嬢でマスクウェルの婚約者だった可愛らしい少女だ。
この国を古くから支え続けた古参の貴族で、アリスは攻略対象者のトレイヴォンと幼馴染。

ハート女王はマスクウェルとアリスの間を引き裂いて、国を守ることを選んだ。
婚約者だった二人は引き離されてしまう。
とは言っても、今の段階では十二歳なので、まだ愛とか恋とかではないようだ。