それにマスクウェルと距離があることもわかっていたのだやれう。
万が一のためにと、ファビオラを狙う令息は後をたたない。
何故ならば何かのタイミングでファビオラがマスクウェルとの婚約を解消した場合、彼女の心を射止めた者が勢いのあるブラック伯爵家の跡継ぎなのだ。
しかし、もしもファビオラが望んでくれるのならトレイヴォンも側にいたい。
ファビオラのためならば、そう思っていた矢先にマスクウェルはこちらを見透かしたように絶対に手放すつもりはないと言い切った。
今の立場からの脱却したいと思いつつ、この関係を崩せないのはマスクウェルと一緒だった。
しかし恋愛対象に見られていないのは明白だった。
ファビオラの警戒対象からは抜け出したものの、熱い視線を送られるのは他の令嬢達ではない。
「はぁ……」
トレイヴォンは髪を掻こうとしてピタリと手を止めた。
『レイの髪、だいぶ伸びたわね。とても綺麗だから伸ばしても素敵じゃないかしら?』
こんな何気ない言葉に振り回されてしまうほどにファビオラのことが好きなのだ。
(ビオラ……)
ファビオラの幸せと笑顔を守りたい。
そのためならばなんだってしよう。
トレイヴォンはそんな決意を胸に笑うファビオラを見ていた。
(トレイヴォンside end)



