ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

マスクウェルはゆっくりと顔を上げる。


「君にファビオラは渡すつもりはない。僕は諦めるつもりはないから、君に可能性はないよ?」


マスクウェルはそう言ってからトレイヴォンの前から去って行った。


「ははっ、マジか」


仄暗い瞳の奥に強い執着が垣間見えたような気がした。
そしてトレイヴォンの気持ちに気づいているのだろう。
ファビオラのこともしっかりと考えて理解しているようだ。

確かにファビオラはマスクウェルと婚約はしていても、結婚するつもりはない。身を引く気満々である。
ファビオラは乙女ゲームのシナリオのまま進むと思い込んでいる。
しかしもうトレイヴォンは気づいていた。

ファビオラの変化は周囲を巻き込んで、彼女が話していたシナリオが変わっているということも。
それにはトレイヴォンとマスクウェルの気持ちも含まれている。

そしてファビオラとマスクウェルが会うことをやめた。
ついに婚約を解消するのかと動き出したのは令息達だった。
わがままお嬢様のファビオラが改心したのは社交界で有名な話だ。

それに親切でお人好し、感情豊かな部分が見え隠れする。
本人はその優しさを隠しているつもりだろうが、色々と漏れ出ている。