「……している」
「なら、どうしてまだファビオラ嬢は婚約を解消するつもりでいるのでしょう」
「…………っ」
マスクウェルは悔しそうに顔を伏せている。
「ファビオラは……っ!」
「……」
「ファビオラは僕と目が合うだけで変な声をあげるし、名前を呼んだだけで紅茶を吐き出す。そんな状況にして僕が想いを伝えたら彼女はどうなる?また失神して夢だったのかしら、とか言い出すに違いないっ!」
「は……?」
「そんな状態でどう想いを伝えろっていうんだ!ファビオラが好きなのは僕の顔だろう?本当は僕自身、見ていない。ましてや、結婚するつもりはないんだ」
「……」
「それに僕がファビオラを好きではないと決めつけている。離れるつもりは一生ないのに……。やはり逃げられない場所に囲って、よく話をした方がいいのかもしれない。ファビオラに僕の想いを聞いてもらうしか関係は進まないからね」
マスクウェルはファビオラのことをよく見ているのだと思った。
乙女ゲームのことをファビオラから聞いていないはずなのに。
「……ファビオラから聞いたよ。僕と婚約しなければ君と婚約するのだろう?」
「ファビオラ嬢がそう言ったのですか?」
「ああ、僕に捨てられたら君が拾っているかを心配していた。まだ約束は有効かと。でも……」



