ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

「……」

「…………っ!」


二人の間に、今までにない気まずい沈黙が流れた。
ファビオラの全身の毛穴から汗が噴きだしていく。
エマも何かやらかしたのだと状況を把握しようと頭をフル回転させているようだった。
ワゴンを持ったまま珍しく固まっている。
ずっと長い時間、地獄のような時間を過ごして数秒……。

マクスウェルの形のいい唇がゆっくりと開いた。


「…………君の気持ちは十分、わかったよ」

「へ……?」

「目が覚めてよかった。僕は失礼するよ」

「…………は、ひ?」


立ち上がって部屋から出て行くマスクウェルの後ろ姿を見ながらファビオラは動けずにいた。
エマがマスクウェルを案内するために早足で彼の後を追いかけていった。
どのくらい時間が経ったのかはわからない。
その間「マスクウェル殿下にここまで付き添ってくれた御礼をいわなくちゃ」とか「わたくし、何を喋ったんだっけ?」と答えが出ないことをぐるぐると考えていた。
エマが部屋に戻ってきたことはわかっても、声すら出せずにいた。


「…………ファビオラお嬢様」

「……ッ」

「大丈夫ですか?」


エマの声に、ファビオラの体の力がフッと抜けてベッドの後ろに倒れ込んだ。
そして「うわぁあぁあぁん!」と、子供のように泣きながらベッドの上に伏せになりゴロゴロと体を左右に動かした。