ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

それからファビオラは今日のマスクウェルとの顔合わせのために、ストーリーを思い出しては対策を考えて作戦を練り練りと練ってきた。
それはファビオラが紫と黒の毒々しい猫を連れた暗殺者に体をバラバラにされて殺される悲惨な結末や攻略対象者の一人で騎士であるトレイヴォンに惨殺される未来を変えるため。
そのために今日まで計画を立ててきたというのに、まんまと攻略対象者であるマスクウェルに一目惚れしてしまったというわけだ。

(……これも物語の強制力というやつかしら。悪役令嬢は断罪されて物語を彩れってこと?)

そもそもマスクウェルのリアル天使のような外見が悪いとは思わないだろうか。
ふわふわのライトゴールドの髪と赤色のメッシュ。
透き通るような琥珀色の瞳……目があった瞬間に思ったのだ。
彼は神様からの贈り物だと。

(神様、どうしてマスクウェル殿下はこんなに可愛いのでしょうか。こんなの無理だわ)

ファビオラがこの物語から退場するのは簡単だった。
マスクウェルの婚約者になることなく身を引けばいい。
断罪ルートを華麗に避けようと思っていたファビオラだったが、マスクウェルのあまりの美しさに完全にノックアウトしてしまう。