ファビオラに転生して早一年──。
乙女ゲームの悪役令嬢だと気づいたのは、侍女が転んだ拍子に熱々のダークチェリーパイがファビオラの顔面に叩きつけられたのが原因だった。
後ろに倒れ込んで後頭部を強打したファビオラはそのまま意識を失う。

しかし目が覚めたら前世の記憶が蘇っており、ここが乙女ゲームの世界だと気づく。
性格も考え方も百八十度変わったため、家族に何度も何度も医者を呼ばれる羽目になったファビオラは現在十二歳だ。


「ファビオラちゃん……!あなたは本当にファビオラちゃんなの!?」

「何度もそう言っているではありませんか。わたくしはファビオラ・ブラックですわ。お母様、落ち着いてくださいませ」

「だ、だが今までのファビオラとは何もかもが違うではないか!ドレスや宝石を毎日強請り、使用人達を影で虐げては、いつも問題を起こしていたファビオラがまるで別人じゃないか!」

「今では残った侍女は今やエマだけだ。そんなファビオラがダークチェリーパイを顔面に叩きつけられて後頭部をぶつけたことにより、別人になるなんて信じられない……!」

「それに関しては反省しております。今日から心を入れ替えて頑張りますと説明しているではありませんかっ!」

「ファ、ファビオラが……反省するなどありえない!」