「またサッカー部見てんの?」


「きょ、恭ちゃんっ。大きい声出さないでよ〜っ」



誰もいなくなった静かな教室には、突然の声がよく響く。

私は親友の声に驚いて、慌てて窓の奥を隠した。



「郁の片想いもいいかげん長いよね。もうすぐ卒業になっちゃうよ?」


「そんなの…わかってるもん」



そう返しながら、私はまた窓の向こう側に目をやる。



細かな水滴の隙間に見えるのは、ずっと想い続けてる隣のクラスの滝沢蓮くん。

中学二年の時に同じクラスだったんだけど、三年になったら離れちゃって。



でも私は、放課後になるとグラウンドに出てくる滝沢くんをずっと見てたんだ。

少しだけ長めの髪が、両サイドからピンピンと跳ねて。

大きな声でチームメイトに声をかけながら、楽しそうにボールを追いかける。



そんな姿を見てると、つい私まで嬉しくなって。

ドキドキして、ワクワクして。



「見てるだけでいいの」



そう、眺めるだけの片想い。