君と一番の恋をする

「真由帆ちゃん、山野先生がさっき呼んでたよー」
「待って、今行く!ありがと!」


俺の隣を、一人の女子生徒がかけて行った。

———それは、まぎれもなくあの“女神”。

思わず立ち止まって振り返る。すらりと長い足は、元気そうに廊下を蹴っていった。


「あっ、侑人。てか、それ俺の教科書だし。なんでお前が……」


俺を呼ぶ誰かの声も耳に入らず、ただその後ろ姿を見つめる。

しゃべるところも。
走るところも。
教師と話しているところも。

全部、俺にはキラキラ眩しく見えた。そして、なにより。


「……かわいい……」
「は?なにが?」
「女神……」

質問されたので素直にそう答える。


「何だお前。ついに頭おかしくなったんじゃねえの」


その言葉さえ耳に入らないでいると、突然手元が軽くなった。教科書を抱えていた両手がちゅうぶらりんになる。


「あっ」


そこで俺は、やっと隣にいる陸人の存在に気が付いた。
視線を感じ俺よりも5センチほど高いその顔を見れば、怪訝そうに眉をひそめる。


「まあ、教科書のお礼だけは言っとくわ。事故には気をつけろよー」


俺から奪った教科書2冊を腕に抱え、手をひらひらさせながら陸人は行ってしまった。
……なんだったんだ、あいつ。
俺はそう思いながらも、頭の中では彼女の声が響いていた。