君と一番の恋をする

side 侑人

あれは高二になったばかりの、春のこと。テニス部所属の俺は部活で遅くまで練習していて、帰るときだった。

……廊下で、女神を見つけたのは。

さらさらのショートボブに、整った顔立ち。
制服から伸びる手足は長く、本当に人間なのかと疑うレベルの美しさ。すれ違ったとき、ほのかに花の香りがした。

て、俺は変態か。
でも振り返らずにはいられなくて、後ろを見る。そして、無意識に立ち止まってしまった。
その堂々とした歩きに、思わず目を奪われる。

———身体に、電撃が走ったみたいだった。


これが一目惚れなんだってことに気づくわけもなく、俺はただ早まる心臓の音を静かに感じていた。


俺たちの学年は8クラスまであり、生徒数は合計280人。
たった一年いただけじゃ、同学年の顔なんて全て覚えられるわけもなく。
最初はあの“女神”が、同じ二年だと仮定して探していた。

でもそんなんで見つからないことは分かっている。
先輩後輩の可能性もあるのに、こんなんでは絶対またなんてこない。せめて、学年だけでも分ればいいのに。

うちの学校に学年色はなく、見分けがつかない。
二年の廊下ならまだいいが、三年と一年の教室のある二階と四階を用もなくうろうろしていたら注意されかねないし。
どうしよう、と考えているまま時間だけが過ぎて行った。


桜が散り、緑の葉が見えてきた四月下旬。
鞄から教科書を取り出そうとすれば、その中に一年で使うものも混じっていた。
たぶん陸人のだ。昨日あたりに間違えてしまったのだろう。

まあめんどくさいけど、届けてやるか。
俺はそう思い立ち、さっそく一年の教室がある四階へ行く。でもそこで、あることに気が付いた。

……そういえば俺、陸人のクラス知らないんだけど。
今まで弟のクラスなんて気にしたことなんてなかったし。まさか、こんなところで必要になるとは。
陸人には悪いけど、諦めてもらおう。はは。

そして、途中まできたところを引き返そうとしたときだった。