「……詰めすぎじゃね?」


 ついポロっと出た。


「え」


 千歳の表情は一気になくなった。

 うん、見れば見るほどおかしい。だってあれがこうなってそうだろ……。計算が合わない。


「そんなにあるわけないじゃん」


 淡々と言うと、ぎこちない声がかえってくる。


「……知らないだけでしょ、見たことないんだから」


 お、めずらしく動揺してる……?


「それともなーに? どっかで覗いてんの?」


 悔しまぎれ、といった様子で攻撃してくる千歳にいつもの余裕はない。
 こっちをからかって形勢逆転狙い、ってとこだろうけどその手には乗らない。
 照れたら負けだから堂々と受けてやる。


「んなわけ。だいたい分かんだよ。毎日まな板が飛びついてくんだから。必死に詰めてるとこ目に浮かぶわ」


 嫌味を言ってやると、千歳はむくれて、よせてるだけだから、とかごにょごにょ言い出した。


「……詰めてない」

「見栄張っちゃって可哀そうなやつー」


 なんだこれ、めちゃくちゃ気分イイ!


「なんか今日冷たいー」

「いつもだろ。沖縄まで付いてこられてうんざりなんだよ」


 メソメソして。どうせいつものウソ泣きだろ。

 千歳の肩越しに女子の先輩たちが砂浜でキャッキャしてるのがみえる。

 トドメだ。たのしい合宿の邪魔者にはしばらく静かにしててもらおっと。