すると千歳がのそりと顔をあげた。さっきみて記憶してたよりやつれた顔でちょっとたじろいでしまう。


「ありがとー。眠くなったから部屋もどるね、おやすみ」


 にこ、と形だけ笑って離れていく千歳の体。

 ――いや、絶対うそだろ……!

 戸惑ってるあいだに千歳は家にひっこもうとしてるし、ドアが閉ま……



「ちとせ」



 ガッ、とノブを引っ張る。千歳が振りかえる。


 ――なんて言えばいい?


「……ッ人を叩き起こしといて『ハイおやすみ』は、ねーだろ……」


 千歳の目がわずかに開く。

 のどがひっついたみたいにうまく言葉が出てこない。


「……だ、から」


 だから、なんて言う?


「……もう少し、(はなし)しよう」