変なこと考えてるのがわかってるのに止められなくてもやもやする。すると後ろから聞こえる足音が小走りになって、千歳にぱっと手を掴まれた。


「おいてかないでよ」

「あ、ご、めん」


 無意識にはやくなっていた足をあわててゆるめる。千歳には手をとられたままだ。


「……手、は……つながなくていいだろ」

「震えてるから、ね?」


 にやっとする千歳。


「それとは関係ないだろ……」

「じゃーわたしがつなぎたいから」

「……俺は……ちがう」

「だれも見てないからいいでしょ? だめ? ね、大きい道まで」


 道の向こうに駅前のあかりが見えてきている。そんなこと言ってコイツ、大通り出てもなんだかんだ丸め込んでずっとこのままでいる気だ、ぜったい。


「はなさないで……」


 こどもみたいな顔と無防備な格好でよわよわしく手をにぎってくる千歳をみると、こっちがわるいやつみたいな気分になってきて苦しい。


「……おねがい」


 目を見られるともうほんとに、いやだとか言えなくなる。さっきからなんかコイツのことしか考えられなくなってるし……こんな風にさせられるから千歳のお願いはすきじゃない。


「……もう黙れよ」


 言い捨てて足をはやめる。かさなったままの手のあいだをとおりぬける夜風がやけに涼しかった。


+ the End? +