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「ミニストップいくから、浅黄(あさぎ)くん付いてきて」


 土曜日の夜。自分の部屋のベランダに出たところで、向かいのベランダに現れた千歳(ちとせ)に声をかけられた。たぶん窓をあける音を聞きつけて顔をだすんだろう。となりの家に住む幼なじみのコイツとは、毎回じゃないけどたまにこうしてしゃべったりする。


「俺、今から風呂入るとこなんだけど」


 めんどくさそうな顔をつくって返すけど、千歳は気にしていない様子で、


「ちょうどいいじゃん夜のお散歩。ちょっと運動してお風呂はいったらよく寝れそうじゃない?」


こじつけみたいなことを言ってきた。


「調子いいことばっか言うなよ。お前風呂入ったんだろ、とっとと寝ろ」


 もう寝る前、といったかんじでラフな格好の千歳をみてシッシと追いはらう。


「え~かき氷食べようよ~今日暑かったしさ~今涼しいしさ~」

「もーうるさい、はやく家入れよ」

「おねがい~浅黄くんも好きでしょかき氷」


 たしかにミニストップのかき氷は惹かれるし、最近急に暑くなったから夜風にあたるのも悪い気はしないけど。休みの日までコイツのお願いを聞いてやるのは癪な気がする。


「わたしが暴漢におそわれてもいいのー?」


 返事をしぶっている俺にセコイ手で追い打ちをかけてきた。


「じゃー昼にすればいいだろ、ひとりで。おやすみー」

「待ってよーもう。じゃー今から行っちゃうから」


 引きあげようとする俺より早く、千歳がカーテンの向こうに消えた。


「おい!」