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「浅黄くん合コンいったの!?」

「行った」


 本館の階段のしたで待ちかまえていた千歳につかまった。
 たぶん小野寺から話を聞き出したんだろう。行くまえにバレると絶対じゃまされただろうけど、行ったらこっちのもん。事実はどうであれ、千歳離れをすすめているのを本人にも知っておいてもらわねーと。


「浮気だぁ……っ!」

「浮気じゃねーだろ、そもそも付き合ってねーし!」

「なんでいくの~合コン~ひど~い」

「ひどくない! 彼女ほしいっつっただろ! なんでこんなこと大声で言わなきゃいけねんだよ……」

「わたしとつきあってよぉ」

「お前以外がいいの!」

「いじわる~! もうきらい!」

「やった!」

「やだぁ~すきぃ~」

「ッやっめろ、ひっつくな! シャツのびるって!」


 ぎゅ、と千歳がシャツをくっちゃくちゃににぎりしめて泣きついてくる。けど、次の瞬間、俺のリュックの傘を目ざとくみつけて「これ……」と手をのばして真顔になった。嘘泣きじゃねーか。

 右ななめの子の傘。めちゃくちゃかわいい系の柄とかではないと思うけど、たしかに一目みたら女子の傘だとわかると思う。ていうか、千歳なら気づく。
 「浅黄くんにオンナのカゲが!」とか言ってとっととあきらめろ!