「……やだ」


 それきり黙った千歳の表情がみえない。雨音がつよくなった気がした。大人しくなった千歳がすこし心配になるけど、ここで引いたら今までと同じだ。


「はっきり言うけど俺もそろそろ彼女とかほしいし、お前がじゃまってこと。大学であんま話しかけんなよ。いっしょに帰るのもナシ……高校でモテなかったの半分はお前のせいだからな!」


 気まずいのにたえられなくて、最後のほうは冗談めかしてしまった。瞬間、腕をつかむ千歳の力がぎゅっとつよくなった。


「痛って! なんだよ、怒ってんのか!?」

「浅黄くんはこれ以上モテなくていい! 追いはらうの大変だったんだから!」

「うそぉ! まじ! モテてた!?」

「よろこんじゃだめ! 彼女ほしいならわたしがなる!」

「お前とはぜっっったい嫌!」

「じゃあいっしょにいるのやめないからね!」

「じゃあ、ってどっちも変わんねーじゃん。距離おきたいっつってんだろぉ……」


 ぜんぜん聞く気ねーコイツ。さっきちょっと心配して損した。千歳はこういうやつだ。