「先生。俺たちがいて邪魔じゃない?」







雪(呼び捨ての仲になった)が突然聞いてきた。







「邪魔じゃないよ。」








「迷惑じゃない?」









「迷惑じゃないよ。」







「そう。」








「うん。」








……






雪、大丈夫か?








あんまり聞くのは良くないのか?









「先生、姉ちゃんを幸せにする方法教えてよ。」






真顔で言ってきた。







「水無月、をか。」







めっちゃむずいな。









……








「わからんな。」






うん、わからん。







「先生だからってなんでもわかるわけじゃないんだね。」







雪が驚いたように言った。






「……当たり前だよ。わからないことだらけだ。全部わかってたらつまらないじゃないか。」







「そう、かなぁ。僕はつまらなくていいから、……全てに正解が欲しいよ。
姉ちゃんがどうしたら嬉しがるのか、
姉ちゃんを助けるために、何をすればよかったのか。
答え合わせしたい。全部。」







……








「……答え合わせってさ、「間違ってる」「合ってる」じゃないんだよ。」







「?」







「……俺は数学の教師だから言うけど、問題で一つもあってないところなんてないんだよ。あ、まあ答案を埋めてなかったらまた違う話だけどね。
……ここまでは合ってる、とか、そういうのばっかなんだ。

全部が全部間違ってることはないんだよ。」








「……」







雪が下を向いた。








「……少なくとも雪は答案に文字を書いた。
それなら間違ってるってことはないよ。」







「……算数みたいに公式があればいいのにね。当てはめるだけなら楽なのに。」








「……そうだな。」