私より遅く家に帰って来たお兄ちゃんに玄関で「ねぇ、今日の試合の紅組の背番号9番の人って誰?」って問い詰めた。

「何だよ美羽、まずはおかえりなさい、だろー」と笑顔で頭を撫でながら私を甘やかすお兄ちゃんはやっぱりシスコンだ。

「おかえりなさい、お兄ちゃん。で、あの背番号9番の人って誰?」

「俺、前からちょくちょく話題に出してただろ? あいつが圭。真田圭」廊下を歩きながら、お兄ちゃんはしれっと答えた。

「やっぱり、あの人が……真田、圭、先輩」

「何、美羽。圭がどうかした?」

「いや、その。今日の試合かっこよかったなぁって」

 突然照れてもじもじする私を見て、お兄ちゃんが「まさか、美羽……圭に惚れちゃったの?」と、妙な勘の鋭さを発揮した。

 『惚れた』そう言葉に出されて再確認する。これが恋だって。だって、あんなかっこいい姿見たら気になるもんじゃない? 中学の時、何回か告白されたことがあるけど、何となく恋っていうのが分からなくて、毎回断ってた。自分から好意を持つって、恋をするって、こんなに胸がぎゅってなって、その人の事しか考えられなくなるものなの? こんな気持ち、知らなかった。だけど圭先輩のこと、もっと知りたい。

「お兄ちゃん、私、圭先輩と仲良くなりたい」