放課後はキミと。


「俺のことを、ちゃんと見てくれてるから」
涼村くんは佳耶さんを見据えて、迷いなくそういった。
そのあと、あたしをちらりと見て、小さく笑う。

「外見とか頭いいとかスポーツ万能とか、そーゆうことで俺を見ないから」
「うちだって! うちだって深月のこと見てるもん!!」
佳耶さんは拳を握り締めて、まるで捨てられた子どものように叫んだ。
それは直接的に気持ちが伝わってくるようで、あたしも心が痛かった。

あたしも、その気持ちを知っているからだ。
昨日まで、あたしが抱いていた気持ちを彼女はきっと今、感じている。

「……佳耶が見てるのは、俺じゃないだろ?」

涼村くんの静かな問いかけは、その場にやけに響いた。
佳耶さんはその言葉を聞いて、時間が止まったように固まって、口を閉ざした。

……え?
そしてあたしはこの場においてただ一人、状況を把握できない。

「もう、自分の気持ち誤魔化すのやめろよ」
「うちは、深月のことが、好きやもん」
拗ねた子供のような口調だった。
目線をふいと横に向けて、涼村くんと目を合わせない。

「佳耶」
涼村くんが優しくそう呼んで、佳耶さんはハッとしたように、瞳が涼村くんに戻ってくる。
その瞳はゆらゆらと不安げに揺れていた。
「……今、俺の奥にだれを見ている?」
「っっっっ」
佳耶さんは唇を噛み、うつむいた。
「文兄なんてうちは見てない……」
独り言のようにつぶやいて、それから顔をあげた。
「うちは、まだ、あきらめないから!」
宣言するように叫ぶと、佳耶さんは脱兎の如く駆けていった。

完全に空気になっていたあたしはなにもわからず、涼村くんは隣ではーあと深いため息をついていた。

あの、展開にまったくついていけてないんですけど。
文兄って誰ですか。

「……ごめんな?」
涼村くんがあたしの顔を覗き込んで謝ってきて、その距離に心臓が飛び跳ねそうになるくらいびっくりしてしまう。
「え、と」
「ちゃんと説明する」
涼村くんはぐいっとあたしを引っ張って、頭をゆっくり撫でた。

その仕草は明らかに昨日までとは違う甘さをもっていて、あたしはやはりそれに慣れなくて、そのまま硬直していた。