放課後はキミと。


***

関係性が変わった放課後。
あの後、先生に答案用紙を返して、二人で教室で明日の勉強をして、結局いつもの補習を終える時間になっていた。
連絡先も交換して、涼村くんの名前があたしのスマホにあることがうれしくて顔がにやけた。

「とりあえずさ」

そして、いつもと少し違う雰囲気にまだ慣れないままのあたしと。
いつも通りすぎる涼村くんが差し出したのは、右手だった。

「……え?」

その意味を図り損ねるあたしに、涼村くんは眉根を寄せて不機嫌な顔をする。

「おてて繋いでかえろっていってるの」

おてて! おててだって!!
か、かわいすぎる……。

ああ、ほんとにあたし。
"彼女"になれたんだ。

顔が緩みそうになるのを必死に抑えながら、ゆっくりと左手を重ねた。
途端にぎゅっと握り締められて、思ったよりその手が大きくて、男の子なんだなと感じた。

「じゃ、帰るよ」

そのまま引っ張られる、体。
ただ、彼の背中をみつめる。

心臓がどくどくうるさい。

手汗、かいてないかな。
もうなにもわかんない。

「あ、」

校門前で仁王立ちしている人影を見つけて、咄嗟に手を引っ込めようとする。
が、
涼村くんはそれを許してくれなかった。

いつも香る柑橘系の匂いは、今日はしていなかった。
いつもより少し、元気のなさそうな佳耶さんがそこにいた。

佳耶さんの視線はあたしと涼村くんの手にあった。

「佳耶さん……」
思わず名前をつぶやいてしまうと、佳耶さんの眼光が鋭くなった。
びくっと反射的に肩がすくんだけれど、あたしは、逃げてはいけないと、思った。

だってあたしは、彼女の好きな人と結ばれてしまったのだから。

「あ、あたし……」
「付き合うことにしたんだ」
あたしの言葉を遮って、涼村くんはあっさりと爆弾を投下した。

直球……!
それ以外に確かにいいようはないんだけど…。

佳耶さんは特に驚いた様子もなく、髪をかきあげた。
「なんでうちよりその子がいいのか、聞いてなかったな」
ずいぶんと冷静に彼女は言った。

涼村くんがあたしの手を握り締める力が少し強くなる。

その答えは、あたし自身も知りたくて。
でも聞いてもいいのか、わからなくなる。