「おー。りん、疲れ果ててるね」
紗世の声に、うん……。と机に突っ伏したまま返す。
「もう、当分頭使いたくない……」
「明日もテストだけどね」
「いわないでえええ」
耳を塞いで、ころんと首を横に向ける。
向こうに見えるのは、彼の姿。
知らずに、目で追ってる。
「なんか食べてく?」
「ううん。今日は帰る」
彼を見た途端に、痛みを訴える心臓を抑えつける。
どうにかして早く、忘れないと。
「おーい、卯月いるかー」
そのとき、教室に担任の能天気な声が響いた。
あたしが目を向けると、ちょいちょい手招きをしている。
……なんだ?
「紗世、先帰ってていいよ。あたし、ちょっといってくるから」
ため息をついて荷物をもって立ち上がると、紗世も苦笑して頑張ってーと送り出してくれた。
無言で職員室まで向かっていたが、呼び出される理由は一つしか思いつかない。
英語のテスト結果だろうな。
もう採点したの? 早くない?
でも呼び出される理由なんて他に思いつかないんですけど。
変に緊張しながら担任の席までいくと、二枚折りたたまれた紙を差し出された、
……もしかしなくてもこれは。
受け取って、恐る恐るプリントを開ける。
そこに記されていたのは、見たことのない点数だった。
「お前だけ先に採点した。及第点だ。よく頑張ったな」
思わず名前が間違いじゃないか確認して、それから点数を見て、目を瞬かせる。
うわあ。
普通に、なきそうなんですけど。
これが自分がとった点数なんて、信じられない。
「涼村にも、感謝しとけよ」
なんでもないことのように担任にいわれて、あたしはついぐしゃっとテストを握りしめてしまう。
そんなことにも気付かず、担任はかかかと豪快に笑った。
「お前もあんなイケメンに見てもらえて、幸せだったろ」
……先生。
その話は今あたしには禁句なのですが。
「お? どした?」
黙ってしまったあたしに、担任は首を傾げてくる。
この繊細なオトメゴコロが先生にわかるはずない。
ていうか、元はといえば先生のせいだ。
先生が涼村くんを補習の講師にしなければ、彼を今も苦手だったはずで。
こんな気持ちも、こんな想いもしなかったはずで。



