放課後はキミと。


「なんで急に?」
問いかけは、ひどく不自然に見えた。

なんで?
なんで、なんて貴方が一番わかっているでしょう?

「もう涼村くんが重荷に感じる必要、ないの」

あたしのために。
あたしのせいで。

「俺、重荷になんて感じたことないよ」

どうして?
どうして、そういうこというの?
どうして、あたしが一番言いたくないことをいわせるの?

「涼村くんには好きな人が、いるでしょう?」

一瞬目が大きく見開いて動揺するのを、あたしは見逃さなかった。
まだどこかで淡い期待をしていた自分がおかしくて、馬鹿みたいで。

笑えた。

手首をぎゅっと握り締めて、あたしはなんでもないようなフリをした。
大丈夫、って顔。

「あたしもね、好きな人いるから」

笑え。笑うんだ。
口が引き攣ってるのを感じながら、それでも笑みは崩さなかった。


「だからもう、終わりにしよう?」

何の関係もなくなったらきっと。
この想いは風化してくれるはずだから。


「――わかった」
しばらく黙り込んでいた彼だけど、あたしの言葉を当然受け入れた。

わかっていたのに。
断る理由もないのだから。

ずきずき胸が痛い。
心臓がひっきりなしに引っかかれているような、そんな感覚。

「悪かったな、好きなやついるのに」
ぼそりとつぶやく涼村くんに、ぶんぶん首をふる。

今度は心臓がおしつぶされそうだ。

「あたしもごめんね。今まで、いっぱい迷惑かけて」

声が、震えてる。どうか、気づかれませんように。

「俺がしたくてしたことなんだから、謝るな」
そっけなく言い放つその言葉に、痛みが深くなる。

忘れられない傷が、想いが、深くなる。

「テスト、がんばる」
「当然」
優しく笑いかけるのは、いつもの涼村くん。
それほど、彼にとったら動揺しない出来事だった。

あたしと、バイバイすることは。

「あ、あたし飲み物かってくるね。のど、からからなの」
「ん、いってらっしゃい」
「うん」
自分の机に戻って、ぎこちない動作で財布をとると、そのまま逃げるように教室を飛び出した。