「ふひゃ?」
気付けば両頬を手でつままれて、強引に顔をあげさせられた。
紗世の瞳とかちあって、紗世は呆れたように「そんなの関係なくない?」とあっさりといった。
「その子が好きだからって何?って感じ。涼村くんが好きなわけじゃない」
「でも! あの子は名前で呼ばれているのに、あたしはあんたでっ、あの子は涼村くんの腕をもてるのに、あたしはそんなこともできなくてっ」
伝えれば伝えるほどに、目の前の紗世の顔が歪んで、世界は淡く散る。
そのとき、唐突に気づく。
ああ、そっか。
あたしは、嫉妬しているんだ。
彼女でもなんでもないけど、彼にとって一番近しい存在は、あたしなんじゃないかって勝手に期待して。
それを完膚なきまでに突き落とした彼女の存在に、どうしようもなくやきもちを焼いているんだ。
美男美女で。
名前で呼び合って。
学校が違っても会いにいけば一緒に帰ることができる関係。
逆の立場だとしても、あたしはそんなことできるはずもない。
あたしと立場が違いすぎる彼女の存在が羨ましくてどうしようもなく苦しい。
「ねえ、りん」
ネガティブ思考に陥るあたしに、紗世は再度両手であたしの顔をあげさせる。
「その女の子がいたとして、りんは涼村くんへの恋をあきらめられるの?」
この恋を、あきらめる?
セカイが小さく弾ける。
佳耶さんがいたとして、この気持ちを、この想いを、あたしはあきらめることができるの?
涼村くんの笑顔が、抱きしめてくれた強さが、あたしの心を締め付ける。
「お似合いかどうかってそんなに大事なこと?」
大事な、こと?
「りんはさ、涼村くんを外見や頭がいいから好きになったの?」
外見とか、頭脳明晰だとか、運動神経抜群だとか。
そんな単純なことで、涼村くんを好きになったのか。
答えなんて、単純明快。
あんたほんと絶望的といいながら見捨てないところも。
俺、あんたのことえらいと思うよ。なんて不器用に慰めてくれるところも。
周りの言葉に負けないで、影で努力しているところも。
外見なんかじゃない。そんなもので、彼が好きとか嫌いとかいう次元じゃない。
あたしは、涼村くんだから、好きなんだ。
「違うよ」
「じゃありんが好きになった涼村くんは、自分にお似合いとか、お似合いじゃないかで人を好きになるの?」
あたしが、3週間見てきた彼は――。
女の子を、そんなことで選ぶ人なんだろうか?



